ハンナとキブツ


【キブツとは?】
 キブツはヘブル語(イスラエルの言葉)で「集団」や「集結」を意味する。端的に言えば生活共同体である。キブツは、資本主義の中にありつつも労働、消費、教育、全てが共同化であり私有財産を認めない社会主義集団である。
 ひとつの土地に、多くの家族が集まり生活し、食料、住宅、教育、医療など生活に必要なものは、各メンバーの必要性を考慮して平等にまかなわれる。労働は1日8時間、食事はキブツの共同キッチンで作られ食堂で食べる。子供は、キブツの中にある「子供の家」で育てられる。

【キブツの発生】
 近代シオニズム思想に感銘した青年達が、祖先の地にイスラエル国家を建設しようと各地から帰還して来た。しかし、彼らを待ち受けていたのは、緑ひとつない不毛の砂漠であり風土病であった。そこで彼らは生活の基盤を作るため自衛手段を備えた農業集団を作った。それがキブツとモシャブである。モシャブは家族毎に生活するが、キブツは全てを共同とする。
 1910年、最初のキブツ(キブツ・デガニア)が、ガリラヤ湖畔に建設された。そしてキブツが基盤となりイスラエル国家が誕生したのである。

【現在のキブツ】
キブツは現在、イスラエル国内に約300ヶ所、人口約13万人を数え全人口の3%を占めている。国内の農業生産の40%を生産し、政治、経済また社会的にも非常に重大な位置を占めている。時代と共に、農業中心から工業へと移行しつつ、今なおイスラエルの経済を支えている。
またキブツには、滞在期間は様々ではあるが、世界各地から若者がボランティアとしてやって来る。彼らもキブツのメンバーとして扱われ、生活が保障され、その代償として労働力を提供する。


    キブツで
  ハンナは、キブツとモシャブについて日記に次のように述べている。
「キブツは確かに良い。まず経済面からいえば、とても合理的で、労働状態の面でも申し分ない。基本的に共同生活をするという点では、キブツは最適な形態だと思う。だが、精神的な面からいえば、モシャブの生活のほうが、ずっと利点がある。誰もがキブツの生活に向いているわけではないということが断言できる。いずれ、両方の利点をうまく結びつけた中間的な方法が見つかるだろう。」(1940年7月26日)
 彼女はいくつかのキブツで働いたが、キブツの生活は心を満たさず、さらなる自分の存在価値を見いだそうと模索しキブツを出たのである。
 「他の人が苦しんでいるというのに、私はここで快適に暮らしていると思うと、何かしなければならないと強く思う“何か全力を尽くせるようなことを”自分自身に存在価値を与えるために。」(1941年7月9日)


ハンナ・セネシュ展    ハンナ・セネシュ記念館